第10回[老年看護学]加齢に伴う呼吸機能の変化で正しいのはどれか

看護国家試験対策講義

老年看護学

[午前 61] 加齢に伴う呼吸機能の変化で正しいのはどれか。【第100回】

1.残気量の低下
2.肺活量の低下
3.1秒率の増加
4.気道クリアランスの向上

加齢によって、肺胞の弾力性が低下し、二酸化炭素が吐き出しにくくなります。

みなさんこんにちは!
今回一緒に勉強するのは、今年2月20日に実施されました第100回国家試験の問題です。

日本は今、超高齢社会です。超高齢社会というのは、65歳以上の方が人口の21%以上を占める社会のことです。ですから看護の対象者も高齢者が多くなり、国家試験では老年看護の出題が増加しています。老年看護では加齢に伴う生理的な変化を学ぶことが大切です。気持ちは若さを保っていても、残念ながら体は確実に加齢による変化を遂げていくようです。この問題は呼吸器の加齢に伴う変化についての質問です。それではさっそく私達の呼吸の生理機能について復習しましょう。

私達の体は酸素を使って生きています。酸素は大気中に含まれていますので、大気を体の中に吸い込んでいます。具体的には鼻から吸い込んだ酸素をいったん肺に取り込み、肺から血液に酸素を渡し、血液が全身の細胞に酸素を配っています。肺に取り込まれた酸素が血液に渡る場所は、風船のような肺胞でしたね。吸い込んだ空気によって肺胞が膨らみ、肺胞を取り囲んでいる毛細血管に酸素が移動します。なぜ気体の酸素が血液に移動するのか、不思議ですね。実はこの仕組みは濃度の違いによるものなのです。肺胞の中より、毛細血管の中の方が酸素の濃度が薄いので、ぎゅうぎゅう押し込められている肺胞から、空いている毛細血管の中に酸素は逃げていくわけです。

拡散
このような現象を拡散といいます。そして血液に乗って細胞に運ばれた酸素は全身の細胞に届けられ、細胞はこの酸素を使って栄養分をエネルギーに変えて生きているのです。酸素を使って栄養を燃やすと二酸化炭素が発生します。この二酸化炭素は血液が回収し、肺胞に渡して呼気として吐き出しています。二酸化炭素は酸性物質なので、血液中に溜まると血液が酸性に傾いてしまいます。血液が酸性に傾くことをアシドーシスといいます。私達の血液はアルカリ性(正常血液pH7.35~7.45)でないと元気に生きていられませんので、絶え間なく呼気によって捨て続けなければなりません。このように呼気は命を守るためのものなのです。ここで大切なことは、確実に呼気として二酸化炭素を排気するための仕組みです。ゴムを引っ張って伸ばすと、伸びたゴムは必ず戻ろうとして縮みますね。つまり息を吸って膨らんだ肺胞は必ず縮みます。縮むことで、肺胞の中にある二酸化炭素を押し出すことができるわけです。ですから肺胞の伸び縮みが呼吸機能に大きく関わっているということがおわかりいただけたと思います。

しかし、この肺胞の弾力性が加齢によって低下してしまうのです。年を重ねるごとに、膨らんだ肺胞が戻りにくくなっていきます。伸びたゴムの戻りが悪くなるということは、肺胞の中にある二酸化炭素が吐き出しにくくなるということです。正常な肺胞も決してぺちゃんこになるわけではなくて、残気量といって、少量の空気は常に肺胞の中にたまっていますから、一定の残気量があることは生理的な現象なのですが、加齢とともに生理的な残気量を超えて、呼吸機能が低下していくのです。つまり年をとると肺胞がぎゅっと縮んでくれなくなり、残気量が増加するということです。

ところで、加齢といっても個人差があり、大気汚染や喫煙歴によっても大きな影響を受けます。ですからどの程度呼吸機能が低下しているかを計ることが必要であり、その検査のひとつに、1秒率があります。思いっきり息を吸い込んで、その空気を瞬間に思いっきり吐くことをイメージして下さい。おそらくみなさん達なら、吸い込んだ空気を1秒間で全部(100%)吐ききることができると思います。これは1秒率100%の状態です。ところが高齢者は、肺胞の縮みが弱くなりますので、1秒間で吐き出せる量が減少します。つまり加齢現象として1秒率の低下が挙げられます。例えば70%以下になりますと、閉塞性呼吸器疾患ということになります。

それでは問題を見てみましょう。選択肢1は残気量についてですが、加齢とともに肺胞の収縮が悪くなって二酸化炭素が溜まりがちになりますから、残気量は増加するわけです。よってこの選択肢は誤りです。選択肢2は肺活量についてですが、肺活量とは自分の限界まで息を吸って、限界まで吐いた時の量のことです。加齢現象として、高齢者では肺胞の縮みが悪くなって肺胞の中に残っている残気量が増えるわけですから、肺活量は減少することになります。よって正しい選択肢はこの2番です。選択肢3の1秒率は、加齢現象によって減少するのですから誤りですね。

また選択肢4の気道クリアランスについてですが、外気中にはチリやほこりが混ざっていますので、私達の気道はフィルターとしての役目をもっています。有害物質を排除するために鼻腔も咽頭も喉頭も気管支も様々な工夫がなされており、有害物質はくしゃみや咳によって追い出しています。このような力がクリアランスで、この仕組みによって肺胞に到達する時にはとてもきれいな空気になっています。このような咳やくしゃみは防御反射なのですが、実は加齢とともにこれらの反射も低下してしまうのです。よって加齢によって気道クリアランスが向上するというのは誤りです。

いかがでしたか? 私も日々運動不足と筋力の低下を実感しているのですが、これは運動の筋肉、つまり随意筋についてです。しかし呼吸など内臓の筋肉についても確実に衰えているのですね。かなわないことと知りつつ、年はとりたくないな~と思ってしまいます。ただ、加齢によってどんなに筋力は衰えても、人を思いやる心は強化させていきたいと思っております。

それではまた。

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看護国試予備校さわ研究所の代表。年間のべ10,000人の看護学生に講義し、現職のナースに元教え子も多数。
【著書】「ここからはじめる!看護国試必修対策テキスト」(啓明書房)、「ちびっこ看護ハンドブック」(さわ研究所)、「これで完璧!看護国試過去問完全攻略集」(啓明書房)、「さわ先生の誌面講義」(医歯薬出版株式会社)