第7回[成人看護学]術後4日の下垂体腫瘍切除術後の患者への指導で適切なのはどれか

看護国家試験対策講義

系統別成人看護学

術後4日の下垂体腫瘍切除術後の患者への指導で適切なのはどれか。【第96回】

1.水分を制限する
2.塩分を制限する
3.定期的に鼻をかむ
4.排尿量を記録する

(「これで完璧! 看護国試過去問完全攻略集2011年版 ●さわ研究所編/啓明書房刊」より)

お元気ですか?
今回一緒に勉強する過去問題は脳腫瘍のひとつ、下垂体腫瘍についてです。

脳下垂体はホルモンの調節中枢。まずは、ホルモンの正常な働きについて押さえておくこと!

脳下垂体はホルモンの調節中枢
脳腫瘍の中でも下垂体腫瘍は良性の腫瘍ですが、治療を行わないとすぐそばにある視神経を圧迫して視野や視力が障害されるようになり、やがては失明することもあるんですよ。
脳下垂体といえば? そう、ホルモン調節の中枢でしたね。ですからここに腫瘍ができると、脳下垂体ホルモンのひとつ、あるいはいくつかが過剰に分泌されてしまうことがあります。そうなると正常な下垂体細胞を圧迫して、別の種類の下垂体ホルモンが産生できなくなってしまいます。つまり下垂体腫瘍ができると、出すぎるホルモンや、出なくなってしまうホルモンがあって様々な症状が出現してくるわけです。さらに手術後は、ホルモンを分泌する細胞を切り取ってしまうことでホルモンが出なくなり、不具合が発生します。

さて、このようなホルモンにちなんだ疾患に関して、皆さんたちは、ひとつのホルモンでも過剰や不足で病気は異なるから、覚えることがたくさんあって大変、と言います。いったいどのように勉強すればよいのでしょう。答えはひとつです。疾患の勉強の前に、まずホルモンの正常な働きをしっかり押さえておくこと!
これに尽きます。そうすれば、このホルモンが出すぎるとどうなるのか、逆に出ないとどうなるのか、スムーズにわかるようになりますから、一度徹底的に覚えてしまえば確実に点数がとれるのです。簡単に得意分野に早変わりしますよ。それではここからは具体的に問題を使って確認していきましょう。

ホルモンの正常な働きから、それぞれの症状について必要な対応策を推測しましょう

ホルモンの正常な働き
選択肢1は、水分制限が必要かという質問です。答えは×です。

下垂体腫瘍の切除術によって、下垂体後葉から分泌されるホルモンのバソプレシンが分泌されなくなってしまうことがあります。

バソプレシンの働きはなんでしたっけ? バソプレシンは体液の浸透圧の調節を行っているホルモンです。体液が濃くなると(浸透圧上昇)、ちょうど良い濃さまで薄めようと、腎臓に対して「水を排尿してはならぬ、水を血液中に再び戻しなさい」と命令する、水分再吸収ホルモンです。腎臓でろ過される水分は放っておけば尿として捨てられるものが多いのですが、それをストップして再吸収させるので、利尿させない、つまり抗利尿ホルモンと呼ばれているのです。では、このバソプレシンが分泌されなくなればどうなりますか? 水分は多量に尿として排出され、からだの水分は減少してしまうのです。そうです。水分を制限するなんてとんでもないということが分かりましたか? 水分補給をしなければ脱水になりますよ。このような状態を尿崩症といいます。ですから排尿量の測定が重要な観察項目になります。よって選択肢4の排尿量を記録するは正解です。

ホルモンの正常な働きから、それぞれの症状について必要な対応策を推測しましょう

次に選択肢2についてですが、塩分制限が必要かというと、答えは×です。

脳下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンというものが分泌されています。覚えていますか?

このホルモンは文字通り副腎皮質を刺激するものです。この刺激によって副腎皮質は副腎皮質ホルモンを分泌する仕組みになっています。副腎皮質ホルモンには腎臓に働きかけをして、ナトリウムを血液中に再吸収させる役割を持つ、アルドステロンというホルモンがあります。下垂体切除術によって副腎皮質刺激ホルモンが分泌されなくなれば、副腎皮質ホルモンも分泌されません。つまりアルドステロンが出ないということになります。すると体にナトリウムを取り込む指示が出ませんから、体のナトリウムは減少します。塩分制限も不適切ということです。

脳下垂体
脳下垂体は頭蓋骨の中の蝶形骨という骨のくぼみに入っています。蝶形骨は鼻の付け根辺りにありますので、下垂体の手術は開頭せず、鼻から、あるいは上唇の裏からアプローチをしていくことが多いのです。いずれにしても骨に囲まれた中に脳は保護されているので、いったん骨を砕かなければなりません。そして腫瘍を切除した後砕いた骨をかぶせるのです、しばらくはとてももろい状態です。ちょっとした刺激で骨がはがれたり、髄膜が破けたりします。すると脳脊髄液が漏れ出てきます。これを髄液漏といいます。

つまり髄液が漏れ出たということは穴が開いたわけですから、逆にその穴からばい菌が入って髄膜炎を起こす可能性があるわけです。ですから自由に鼻をかむことは避けてもらう必要があるのです。

いかがでしたか? 正常なホルモンの働きを覚えてください。どこからどんなホルモンが出ているのか、働きは何か、それが分かればもう内分泌は怖くありません。しかも実は覚える数はそれほど多くありません。

この夏休みにホルモン丸暗記! なんていうチャレンジはいかがですか。

それではまた。

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看護国試予備校さわ研究所の代表。年間のべ10,000人の看護学生に講義し、現職のナースに元教え子も多数。
【著書】「ここからはじめる!看護国試必修対策テキスト」(啓明書房)、「ちびっこ看護ハンドブック」(さわ研究所)、「これで完璧!看護国試過去問完全攻略集」(啓明書房)、「さわ先生の誌面講義」(医歯薬出版株式会社)