第6回[成人看護学]高血圧の治療薬ではないのはどれか。

看護国家試験対策講義

成人看護学

高血圧の治療薬ではないのはどれか。【第87回】


1.利尿薬
2.アンギオテンシン変換酵素阻害薬
3.アルキン化薬
4.カルシウム拮抗薬

(「これで完璧! 看護国試過去問完全攻略集2011年版 ●さわ研究所編/啓明書房刊」より)

お元気ですか?
今回の過去問題は「高血圧の薬について」とありますが、薬の前に高血圧そのもののメカニズムについて勉強しましょう。

アドレナリンは戦うために必要なホルモン

誰でも知っているこの高血圧ですが、意外と正しく理解している人は少ないように思います。
アドレナリンは戦うために必要なホルモン
皆さんは、今日本で治療を受けている方々の中で、高血圧症のために治療を受けている方が一番多いということを知っていますか? そしてこの高血圧が日本人の死因の第2位の心疾患、第3位の脳血管疾患の要因になっていることが多いので、これを治療・予防することはとても重要なのです。というわけで国家試験においても、循環器系・脳神経系・薬理・老年看護と、多岐に渡って出題されています。

そもそも血圧って何でしょう?

水道につないだホースと中を流れる水にたとえるとわかりやすいと思います。ホースが血管で、その中を流れる水が血液です。水道の蛇口を全開にして勢いよく水を流すと水圧が上がりますね。これと同じで、心臓から大量に血液を送り出せば血圧は上がるということです。あるいは、順調に水が流れているホースを足で踏みつけたりすれば、その手前は瞬時に流れが滞り圧力が強くなりますね。同じように、血管が詰まったり細くなったりすれば血圧は上がるということです。

では、血圧が上がると何が困るのでしょうか?

血圧が上がると最悪血管が避けてしまいます・・・

血圧が上がると最悪血管が避けてしまいます・・・
では、血圧が上がると何が困るのでしょうか?
それは、最悪の場合、血管が裂けてしまうということです。細くてもろい血管ほど耐えられなくなります。特に脳の血管は髪の毛よりもずっと細くて曲がりくねっていますので、血圧に耐え切れず切れやすいのです。脳の血管が切れて出血する、これが脳内出血の一番の原因となっています。また、いつもペンを押し付けて文字を書いていると指にペンダコができますね。血管は皮膚より柔らかい膜ですから、絶え間なく血液のプレッシャーがかかって いると、だんだん血管の壁も硬くなってくるわけです。このような状態を動脈硬化とよびます。本来、血管は柔らかくてしなやかな程良いのです。なぜなら、心臓からドクンと送り出された血液によってやわらかい血管は膨らみ、次に心臓からの押し出しが止まったところで膨らんだ血管は元に戻ります。そして膨らんだ血管が戻るときに、心臓が血液を押し出していなくても、血管自体が中の血液を押し出してくれるわけです。つまり、柔らかい血管であれば、心臓がポンプの力で血液を送り出しているときも、心臓が血液を引き込んでいるとき(この時は心臓は拡張していますから押し出す力は働いていません)も、絶え間なく血液は流れ続けているのです。しかし硬い血管の場合、心臓から押し出された血液が通過しても膨らみませんから、血液が通過してしまえばそれで終わりです。次の血液が送られるまで何も通らないことになります。血液が届くのを待っている細胞にとっては、血液が届いたり届かなかったりするよりも、絶えず届けてくれる方がありがたいですよね。さらに 硬い壁の抵抗に逆らうように血液を送り出さなければならない心臓にとっても、実は大きな負担がかかってしまうのです。

では血圧を下げるためにはどうしたらいいでしょう?

血管が切れても、心臓に大きな負担がかかっても一大事です。ですからきちんと治療することが必要です。
ではどのように治療すればよいのでしょうか?
ホースの中の水圧を下げるためには水の量を減らせばいいですよね。同じように血圧を下げるためには流れる血液の量を減らせばよいので、利尿薬が効果的です。利尿薬は尿量を増やす薬ですから、結果として当然体液の量、つまり血液量が減少します。これで血圧を下げることができるわけです。それから血管が細くなると血液は流れにくくなり、血圧は上がってしまうので、血管を拡張すればよいわけです。これにはカルシウム拮抗薬という薬を使います。血管には平滑筋という筋肉がついているので伸びたり縮んだりするのですが、この平滑筋を収縮するのがカルシウムです。ですからカルシウムの働きに逆らってしまえば、血管は収縮せず血圧上昇を防いでくれるわけです。

ところでここまで高血圧の話をしてきましたが、本来私たちの体にとって血圧を上げることは悪いことなのでしょうか?
いえ、実は血圧を上げることはとても大切なことなのです。もし血圧が下がってしまうとどのようなことが起こるでしょうか? ホースの水圧が下がれば目的の場所まで水が届きません。私たちの体で言えば、血圧が低いと脳細胞まで血液が届かない、などという事態が起きるわけです。それでは脳細胞は窒息して死んでしまいます。そうならないために、私たちの体にはちゃんと血圧を見張るシステムが備わっています。見張っている場所は腎臓です。もし血圧が下がると、腎臓では警報を鳴らし、血圧を上げるよう促します。このシステムはアンギオテンシン・アルドステロン系といわれるものです。血液の中にはアンギオテンシノーゲンという物質が溶けています。腎臓が血圧低下の警報を鳴らすと、アンギオテンシンⅠという物質をⅡに変換する酵素が働き、血液中にはアンギオテンシンⅡが流れます。アンギオテンシンⅡは末梢血管を収縮させて血圧を上げる働きをする昇圧物質なのです。つまり高血圧の方には、この変換酵素が働かないようにしてしまえば血圧の上昇を抑えることができるわけです。この薬をアンギオテンシン変換酵素阻害薬といいます。血圧だけではないでしょうが、何事もちょうど良い状態が一番良いわけです。

この問題の選択肢にある1と2と4が高血圧の治療薬です。

ちなみに選択肢3のアルキル化薬という薬は抗がん薬ですから高血圧の治療薬ではありません。よって答えは3です。

赤ちゃんの血管はマシュマロのように柔らかいらしいのですが、悲しいかな年とともに段々血管も硬くなっていくようです。そこを何とか柔らかいままの血管でいてもらいたいですね。いや、血管だけではなく、できれば心もしなやかでありたいものです。

ではまた。

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看護国試予備校さわ研究所の代表。年間のべ10,000人の看護学生に講義し、現職のナースに元教え子も多数。
【著書】「ここからはじめる!看護国試必修対策テキスト」(啓明書房)、「ちびっこ看護ハンドブック」(さわ研究所)、「これで完璧!看護国試過去問完全攻略集」(啓明書房)、「さわ先生の誌面講義」(医歯薬出版株式会社)