第4回[成人看護学・血液系]化学療法後、好中球が400/mm3の患者への指導で適切でないのはどれか。

さわ和代

好中球
今回は好中球のお話です。
血液には血漿という液体と赤血球、白血球、血小板という血球がありましたね。血球は骨の中に存在する赤色骨髄で産生されていますが、それぞれまるで異なる仕事をしています。さらに赤血球と血小板は核がない無核細胞で、白血球は核を持つ有核細胞という構造上の違いもありますが、元になる細胞は全て造血幹細胞というもので、血球は種類が違ってもみなこの同じ細胞から分化してできあがっているのです。例えると「お兄さんも私もお母さんのお腹から生まれたけど、お兄さんは学校の先生で、私は看護師として働いている」といった状態です。

好中球は、セコム!?
赤血球のメインの仕事は酸素を運ぶ事です。とても大事な仕事ですが、そう複雑ではありません。それに比べて白血球は体内に侵入してくる病原体から体を守るという非常に複雑なシステムを持っています。

血球の内わけ
白血球は顆粒球と無顆粒球に分類されます。顆粒球は核のまわりの細胞質に酵素や蛋白質などの顆粒を含んでいるものを指し、それ以外を無顆粒球といいます。さらに顆粒球には酸性の色素に染まる好酸球と、塩基性の色素に染まる好塩基球、そしてどちらにも染まる好中球の3種類があり、無顆粒球にはリンパ球と単球が含まれます。これらの白血球の中で最も数が多いのが好中球なのです。健康な人の白血球は1 mm3の血液の中に約4000個から9000個あり、その内の60%程度を好中球が占めています。

好中球
好中球はセコムなどセキュリティーをイメージするとわかりやすいと思います。好中球は絶えず病原体の侵入を見張り、病原体が侵入してきた際には最初に反応し、パクンパクンと飲み込んでくれるのです。この病原体を飲み込む働きを食作用といいます。このように多数の好中球が感染防御のための仕事をしています。さわ研究所の本部校舎が入っているビルは、窓、ドア、エレベーター内、そしてエレベーターホールに至るまで監視カメラやセンサーが設置され、警備室では絶えずそれがモニターに映し出されています。このようにセキュリティーが万全なので不審者の侵入を防ぐことができ、とても安心です。もしセキュリティーが作動しなくなると、外部からの不審者が自由に入ってきてしまうのでとても不安ですよね。つまり、私たちの体も好中球というセキュリティーが感染防御のために働いてくれているのですから、元気な好中球がどれだけいるかを調べることで、感染対策が万全なのか、感染しやすい状態なのかを判断することができるわけです。

患者の感染予防について

それでは今回取り上げた国家試験の問題を使ってさらに知識を深めましょう。

まず化学療法についてですが、元々は病原微生物に特異的に作用する化学物質を使って、その病原体を抑えるための治療のことを指していました。しかし現在は悪性腫瘍に対して抑制的に働く抗癌薬を使った治療のことも化学療法といいます。この化学療法は腫瘍を破壊することが目的ですが、化学療法に用いられる抗癌薬は、正常細胞にも作用してしまうのです。特に活発に細胞が増殖する骨髄や毛根、消化管上皮などへの影響は大きく、骨髄の正常な働きも抑えられてしまい、髪が抜ける、消化器症状が出やすいといった副作用がしばしば起こります。骨髄の働きが抑えられてしまえば、血球を造る働きも低下してしまいます。通常好中球は白血球の約60%程度あるのですから、仮に白血球が4000個としても好中球は2400個あるはずです。ところがこの事例では、なんと好中球がたったの400個しかありません。1つのビルを2400人の警備員が見張っているのと、400人の警備員では守れる能力が随分違ってきますよね。これでは外部からの侵入者に対して非常にもろい状態です。これを医学的には易感染状態であると判断します。このような易感染状態にある患者さんに対しては、最新の注意を払って感染予防に努めなければなりません。

外部からの病原菌の侵入を阻止することはもちろんですが、内因感染症といって、私たちの体に生息している微生物が原因で感染することがありますので注意が必要です。私たちの体には、特に皮膚や粘膜などを中心にさまざまな種類の細菌が常在細菌叢としてたくさん存在しています。通常健康な状態では体に害が及ぶことはありませんが、癌の末期や薬の使用など、抵抗力が低下するとこの常在細菌によって感染症を起こすようになるのです。ですからそれを予防する看護がとても重要なのです。それでは選択肢を見てみましょう。

外部から侵入してくる病原体による感染を防止するためには、何よりも手洗いやうがいの励行が大切なので1と2は適切です。そして常在細菌叢に対しては、粘膜や皮膚の清潔と保護に努め、わずかな傷からも常在細菌の感染を予防する事が大切なので、4の肛門部洗浄は肛門周囲の粘膜の清潔を図るうえから欠かせない対応であり、適切です。しかし、3の歯間ブラシを使用することは粘膜に傷がつきやすく、そこから感染するリスクとなりますので避ける必要があります。

よって正解は3番となります。

では、また!

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看護国試予備校さわ研究所の代表。年間のべ10,000人の看護学生に講義し、現職のナースに元教え子も多数。
【著書】「ここからはじめる!看護国試必修対策テキスト」(啓明書房)、「ちびっこ看護ハンドブック」(さわ研究所)、「これで完璧!看護国試過去問完全攻略集」(啓明書房)、「さわ先生の誌面講義」(医歯薬出版株式会社)