第2回[消化器系]胃酸の分泌を抑制するのはどれか?

さわ和代

今回は胃についてのお話です
消化器系
胃はタンパク質の分解をしています。タンパク質の代表は肉ですね。例えばステーキを食べたとき、一生懸命口で咀嚼して飲み込んでも、それだけでは形を小さくしただけで(物理的消化という)、体に吸収されずに排便されてしまいます。たとえミキサーにかけてから飲み込んでも同じことです。ではどうすればステーキを食べてタンパク質という栄養素を取り込めるでしょうか? 答えは簡単! 血管に入って血液に細胞まで運んでもらえば良いのです。しかし、タンパク質はアミノ酸という形まで分解されないと血管に入ることはできません。そこで血管に取り込める形まで分解しています。この過程を化学的消化といいます。
化学的消化は分解酵素によって行われるもので、胃の分解酵素は胃壁の腺細胞から分泌されます。腺細胞は胃内の3カ所に存在します。

胃での科学的消化
ところで、私達の体は何でできていましたか?タンパク質でしたね。牛肉や豚肉を食べてタンパク質を得て、アミノ酸まで消化して吸収し、吸収したアミノ酸を、DNAの遺伝情報に基づいてあらためて必要なタンパク質に作りかえているのです。
タンパク質は普通食事で摂取していますから、ステーキを食べて分解してそれを基に新しい自分の細胞を作っているので、牛肉も私の肉もそれ程大きな違いはないのです。

胃での科学的消化

ということは、分解酵素の働きでステーキが分解できるなら、私の胃も分解されてしまうということになります。食べたものは分解して欲しいけど、胃壁が分解されては困ります。では、いったいどうすれば良いのでしょう。実はそこに大きな工夫があるのです。
左の絵を見てください。コップは燃やさずに紙コップの中の紙を燃やしたい…。
まず1つめの工夫として、紙コップが燃えないようにアルミホイルなどを貼っておきます。2つめの工夫として、火をつけずにマッチ棒を入れます。そして紙コップがホイルで覆われていることを確認してから紙コップの中で火をつけます。こうすれば紙だけを燃やすことができるという訳です。

それではこれを実際の体のしくみに戻って整理してみましょう。

分解酵素の働き

まず食べ物が胃に入ると、胃壁を覆う役目として粘液が出ます。つまり粘液がホイルの役目です。次に分解酵素はペプシンという物質ですが、ペプシンを胃壁から分泌するとなると、その段階で胃壁を溶かしてしまいます。そこでペプシンをこのまま分泌することはせず、ペプシノーゲンというタンパク質分解酵素の一歩手前の形(不活型)で分泌しているのです。ペプシノーゲンがマッチ棒です。そこに塩酸が火付け役となって分泌されてペプシノーゲンをペプシン(活性型)に変え、火が付くというわけです。ちなみにこの塩酸は強酸物質です。だから胃液は胃酸と呼ばれるのです。
塩酸は、『ヒスタミン』、『アセチルコリン』、『ガストリン』という3つの刺激物質の働きによって、胃の粘膜にある壁細胞と呼ばれる細胞から分泌されます。壁細胞には、これら3つの刺激物質をキャッチする受容体があり、それぞれの刺激物質が受容体に結合することで塩酸の分泌が起こります。食べ物を見たり、においを嗅いだり、味わったりすると副交感神経から『アセチルコリン』という伝達物質が分泌され、食べ物が胃の中に入ると『ガストリン』というホルモンが分泌されます。この『アセチルコリン』や『ガストリン』が『ヒスタミン』の分泌を促します。これら3つの刺激物質の働きによって胃酸の分泌が活発になるのですが、この中で特に重要な役割を果たしているのが『ヒスタミン』であると言われています。

消化性潰瘍と薬
通常私たちの体では、胃酸が強まると小腸から『セクレチン』というホルモンが分泌されて胃酸の分泌を抑えているのですが、火の勢いが強すぎたりホイルに穴が空いていたら、胃壁が燃えてしまいます。これが消化性潰瘍なのです。ひどい状態になると胃壁に穴が空きます(胃穿孔)。このような消化性潰瘍に対しては、塩酸の分泌を抑えなければなりません。『ヒスタミン』の働きを邪魔すれば塩酸の分泌を抑えることができますよね。ヒスタミンの塩酸分泌作用を抑える薬がH2ブロッカーです。
『ヒスタミン』は、壁細胞のヒスタミンH2受容体に結合して胃酸の分泌を促進しますが、H2ブロッカーは『ヒスタミン』よりも先にH2受容体に結合します。『ヒスタミン』とH2受容体との結合をブロックすることで、胃酸の分泌を抑えるのです。
自動販売機をイメージしてみて下さい。欲しいものを選んでボタンを押すとその商品が出てきますね。1のボタンを押すと1の商品が出てくる。実は胃の細胞もこれと同じで、『ヒスタミン』というボタンを押すと塩酸が出てくるのです。 H2ブローカーはあらかじめヒスタミンのボタンにカバーをかぶせておくようなものというわけです。

いかがでしたか?早速国家試験の問題にチャレンジしてみましょう!
ヒスタミンとアセチルコリンとガストリンは胃酸を分泌させる刺激物質でしたね。正解は4のセクレチンです。
では、また

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看護国試予備校さわ研究所の代表。年間のべ10,000人の看護学生に講義し、現職のナースに元教え子も多数。
【著書】「ここからはじめる!看護国試必修対策テキスト」(啓明書房)、「ちびっこ看護ハンドブック」(さわ研究所)、「これで完璧!看護国試過去問完全攻略集」(啓明書房)、「さわ先生の誌面講義」(医歯薬出版株式会社)